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佐波くんがやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!
ヤァ?ヤァ?ヤァ?
佐波くん、この部分、どういう意味なの?どういうつもりなの?
30年くらい考えてるんだけど未だわかりません。 ビートルズが来たらそれはうれしいよ。でも佐波くんが来た方が僕はうれしいはずだよ。 このNKKでおなじみ佐波くん実写版が平沢にやってくる。佐波くんは、僕が適当に作った架空の人物だと思っていた方もいらっしゃったようですが、現実に今もどっこい多摩川のあっちらへんで元気にご存命されている独身男性です。好きな食べ物はニラです。
「誰がニラヴァーナやねん!」(佐波くんギャグクラッシックスより)
ところでハネモノをいよいよ売りはじめるつもりなのだ。寒くなるまえに。
本当は悠長に考えていたんだけど、もう収穫も後半だし、今を逃すと来年の5月まで何もできないことにハタと気がついた。
来年にはじめるなら、今年に少しでもやって何らかのノウハウを得た方が、来年になっていきなりはじめるよりも良いことには間違いない。その差はでかい。時間は無い。ヤルナライマシカネェ。カモネ。
場所は集落センターの前。普段、車はびっくりするほど通らないところだ。
最近の通行量を観察していると、昨年よりもさらに少ないみたい。たぶんガソリンが高い影響なんだろうな。
本当に始めるとなるといろいろ必要です。旗とかテントとか、陳列台とかどうしよ?
野菜はどう並べればいいのかな?八百屋だとザルとか使っていたような。
よく道ばたに立っている旗もさ、あれ両面に書いてないと見えないよね?えっ?片面しか書いてない?うっそー。じゃ、反対になったとき読めないじゃん。
値段も全然検討がつかない。そして肝心なのは、どんな割合で生産者の人々に利益を戻そう? 利益を計算するのには、例えば、だいこんを何本もらって何本売れたって全部記録しなければならないよなぁ。
つまり、僕はやると決めたものの、何から何まで見当がついていなかった。
でも、ま、わからないことだらけだけど、そんな難しいことをやるわけじゃない。
つまり道で野菜を売るのだ。
その時点で村の組長さんにちょっと話して許可をもらっているものの、全員にはキチンと話していなかった。こんど集まるまで待ってられないので、僕は急いで農家の方全員にFAXを流す。
その晩、さっそく電話がかかってきた。今、呑んでるから、ちょっと話そうと。
う~ん。ちょっとドキドキするな。具体的なことを聞かれたらどうしよ? 正直、いくらぐらいの利益が出るかなんて検討もつかない。いつもあんまり考えないでとにかくやってしまう。というより、とにかくやりたい。
ドントホキービョ。
とはいっても、今回は野菜あっての思いつきなわけで…。農家の方の理解を得られなければできないわけで…。
雨の中さっそくおじゃまし、軽く呑みながら話した。
結論から言うと「応援するからどんどんやりなさい」ということだった。ほっ。
「本当はみんなやりたいんだけど、その時間がないのよ、ここいらにはそういう動ける人が居ないのよ」
「ただな、ハネモノっていうのはちょっとイメージ悪いんじゃないだろうか? つまり、あえてハネモノって掲げなくてもいいんじゃなかろうか?」
生産者からすると「どうせ売るならいいものを売りたい」って気持ちがあるのはよく分かる。
「あの、確かにその通りなんですけど、イメージを言い出しちゃうと、結局、今まで通りになっちゃうと思うんですよ。そういうあやふやな基準で、まだ食べられるたくさんの野菜がハネられているってことが変だと思ったことが最初なので、ハネモノっていう言葉は外せないんですよ。イメージ悪くても」
最近は人にちゃんと説明することが増々できなくなってきている。言葉が出てこないんだ。特に酒を呑んでいればなおさらのこと。
生意気な口調にならないように気をつけながらも、譲れないところはキチンと説明しなければならいない。上手く言えたかな?
「じゃ、今度の金曜よ、そこにスイカとメロン置いとくからよ、売ってみなよ」
まーなんかやる気だけは伝わったと思う。よかった、よかった。
帰り、高揚感を感じていた。この土地に来て自分がやるべき事を見つけかけているというような。
さっそく安いテントをオークションで買った。旗はピンクや黄色の布を買って自作した。
「やさい」「直売」「ハネモノ」という文字を書く。片面だけ。ムラに「普通片面だけだよ」と言われたもので。その後、彼女に裁縫してもらって完成。
今回のことについて、ムラは僕の性格を知っているので、突っ込みどころ満載のこの計画でも、あまり細かなことは聞いてこない。とにかくこの人は一度やらせて、失敗のひとつでもしないとわからないって思ってるんじゃないかな?
それでも手伝ってくれるところは、黙って手伝ってくれる。
母親は、僕がムラに捨てられるんじゃないか?といつも心配しているんだけれど、いやー、こりゃギリでしょ。
最近、僕は率先して皿を洗わさせて頂いております。
あと、ムラ、ここに紅茶いれておいたからね、とさりげなく。アピール。愛。
そんな夏の終わりに、東京から僕の高校時代の友達夫婦がやってきた。
佐波くん実写版の来るちょっと前。
そいつとは高校1年の入学した瞬間からのつきあい。入学したてで、まだ席が名前順だったときに横に座ってた奴。
富良野駅に迎えに行った。遠くからケラケラと笑い声。あいつだ。
「おまえ、すっかり地元の人だな。なまら、ほっつい!(意味不明)」
えっ!そう? そう言われてもよくわかんないけどな。いやじゃないけど。でも、正月にも親戚に言われたのを思い出す。
「そりゃ、そうだろ。ここに住んでるんだから。俺さ、昼、まだなんだ。ここでそば喰っていっていい?」
言葉もすくなに、久々に会う遠くからきた友人とその夫人を放っておいて、いきなり一人で駅の立ち食いでそばを喰う。最近、こういうことを平気でしちゃう自分っていけないんだな、普通じゃないんだな、とやっと気付きました。直すかどうかは別として。
相変わらず、そば喰った後のネギ臭はたまんない。例によってその余韻をいつくしみながら、ベンチに腰掛けていた友人夫婦に後ろから聞いた。
「ところで、何が食べたい?」
昨日、札幌でうんざりするほどジンギスカンを食べたのだそうだ。やっぱり?
これね、悲しいかな、もう俺たちの習性なんだね。
今でこそジンギスカンって東京でも「生ラム」だの小生意気なものが食べられるようになったけど、僕が上京した20年前には東京でジンギスカンが食べられるところはほとんどなかった。(西荻に「室蘭」っていう、名前からしてかなりソリッドなジンギスカン屋があったんだけど知ってる? あの店は最高だったな)だから帰省する度にまず食べるのがまずジンギスカン。もう、それのために帰るって感じも。それで東京も戻るときにマトン(ラムじゃないよ)とベルのタレをかばんに入れて帰ってくるの。そのジンギスカンを東京の友達に食べさせると、本当にみんな喜ぶこと、喜ぶこと。そのみんなの異様に喜ぶ姿を見て「ピン」ときてれば、今頃は東小金井に家が一軒ぐらい建ったんじゃないかな、要らないけど。
ちなみに、彼には僕らの結婚式で友人代表としてスピーチをしてもらったのだが、そこでジンギスカンギャグを飛ばして見事に大ゴケ。
「私は彼の体がジンギスカンとみそラーメンで出来てることを知っています」
シーン…(何をいきなり言い出してるんですか?この人?的な沈黙)
だきしめてやりたかった。
笑ってるのは見事に俺一人だけだった。いいんだ。いいんだ。俺とおまえだけがその言葉があながちウソじゃないことを知ってる。それだけいい。
「コマネチ三角、また来てじゅらくよ~ん」(佐波くんギャグクラッシックスより)
まだ空も明るい時分から、我が家自慢のおもてなし七輪ディナーで、ちんたら飲みだした。というより、夏はこれが一番!
焼くものといったら恒例、俺の、俺の、俺の、野菜の数々。
「この俺のピーマン、ここに俺の箸で穴あけてさ、そんで、そこから俺のしょうゆ垂らすの」
「そんで、俺のピーマンを逆さにして立てて、中のタネに俺のしょうゆを浸すようにしてさ…」
「これが俺の…」
この自慢気な「俺のピーマン俺のまんま焼き」の説明、この夏に何回したことだろう?
自慢っていえばこんなことしかないってことなんだけど。
食べながら、奥さんとじっくり話す。実は今回が初対面なのだ。ピーマンがおいしい、トマトがおいしいと言って喜んでくれている。
「私もお酒呑んじゃおっかな?」
なまら、ほっつい!
いいね、いいね。たまに呑む女の人のこのセリフ。結構、おじさん好き。俺だけ?
ここ読んでる女子諸君、この言葉、使ってみ。俺のモテ講座終わり。
意外なことに奥さんと話してみると全く違和感がなかった。というより、僕なんかよりも野菜や畑に対する知識が豊富で、やっぱり有機や無農薬に対する興味が凄くあるみたい。
隣の麓郷から定期的に有機野菜を取り寄せているというからおったまげ。また、実際にあちこちの農家に行って講習を受けているというからなお驚いた。自分なんかよりもよっぽど向いてるよ。俺、マンガだもん。そんなに知ってるなら来ればいいじゃん。野菜作りたいのなら全然できるよ、ここ。たのしいよ。
とはいってもね…。んー。
実は旦那、結構な大手企業に勤めていらっしゃるのです。俺たちあんなに一緒だったのに、あんなに一緒のマトン喰ってたのに、どこでこんなに違っちゃったんだろうね?ほほ。
しかし、そんな違う立ち位置でありながらも、大人になっても、ちょくちょく呑んで話せば、あんまり違和感がなく会話ができた。
本当はやりたいんだよね、こういうことが。
前にハッキリ言われたことがある。「おまえで様子を見る」と。
いいさ、いいさ。どんどん様子を見るがいいさ。でも、目隠しした方が飛び込めるってこともあるのさ。
切るものが大きい人は、ものすごく迷うと思う。
もし逆の立場だったら…。うーん。正直、来てないかもね。
でもね、もし絶対に来るって決めているのなら、その決断は少しでも早い方がいい。定年まで働いて「老後は悠々自適」って考えてるなら、それはどうかな?ああいうことが出来るのは今の世代がギリじゃない?根拠はないけど。まぁ、田舎に住むといってもいろんなスタイルがあっていいと思うからよく考えなよ。と偉そうに言っておいた。
翌朝、平沢を一周して見せてあげる。最終目的地は恒例となっている一番高い丘。
おまえ、もう息切れてるじゃん。こういう生活したいんなら、今から身体鍛えた方がいいぞ。と先輩風を吹かしておいた。
てっぺんに着くと、例外なくみんな感動する。僕らは森をくり抜いたハゲの部分に暮らしているって、ここに来ると本当によくわかります。
そうさ、僕らはハゲの住人なんだ。
しばらく三人でハゲの一番凸部に突っ立ってた。
「あの雲消してみるかな?」といきなりやつが言う。
「雲?」
「あの雲、消してみるから見てろ」
彼が指したのは、正直、あまり大きいとは思えない大きさの雲。
「あれさ、黙ってても消えそうじゃん」
とは、マジだか冗談だかわからない顔でじっと見ているので、言わなかったけれど。
どれよ?あれか?気付かれないように薄笑い。どれどれ。草をむしっては投げて、草をむしては投げ。適当な感じでその雲を見ていた。
…んっ??
…んっ???
…んっ????
「だいぶ、薄くなってきているだろ?」
あれっ?確かにその雲だけ薄くなってきている!
とおもっている内に薄くなるスピードは加速度的に早くなり、眼鏡の向こうの雲が本当に消えちゃったよ!!明らかに周りの雲よりも不自然に。これ、ほんとうなんだ。
「雲は普通に消えるよ」
と、めちゃくちゃな事を言い残して、僕の古い友人は平沢を後にした。
えーっ!!マジ? もし雲消せたらちょっとした隠し芸だ。自慢できるじゃん。
彼らを見送った後、2階で横になって休む。本日も晴天也。でっけー雲が3つある。俺にも消せるかな?やってみたいんだけど、なんかアホくさい気もする。でも、たとえば、3つの中の真ん中だけ消したらこれは本物だよな。とりあえず消してみる?なんかどきどきする。僕は横になったまま、ひたすら雲が無くなったときの状態をひたすらイメージした。
当然消えると思いこむ。雲に気持ちがぐっと入ったのがわかる気がする。側頭部がビーンしてきた。と、同時に。
…んっ??
…んっ???
あっれー、薄くなってきてるわ。
マジで。マジで? マジ、マジで?
端の方が薄くなり、真ん中が薄くなり、その消えるスピードは朝に見たときと同じように、どんどん早くなる。
こわっ!!!
マジで消えた!!あんなでかいのが。雲の編隊の真ん中にでかい穴が開いた!
「雲って消えるんだ!!」
あーびっくりしな、おい。これ、ムラに見せたらなんて言うかな。びっくりすんだろーな。カトキチはニタニタ笑うだけの気がする。くやしーな。認めざるえないぐらいデカいの消してやる。練習しよっと。
やっべー、もうシャシャ(佐波くん実写版)迎えにいく時間じゃん。
ところで、佐波くん、結局今回やってこなかったな。
今週読んだ105円本
「パン屋再襲撃」村上春樹著
※「ビートルズがやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!」ってアルバムがあるんですよ。僕も聞いたことないんですけど。
※「なまら、ほっつい!」 ノリだけって感じで使うとグー。言葉自体には意味はないです。いや、あったんかな?僕は今回の友人の造語だと思ってる。道産子ヤンキー言葉風なんだけど、よく聞くとデタラメ的な。当時、ちょっと、そういうのをバカにしたニュアンスで使ってた。
※佐波くん、次回は必ず来ます。
※お天気予報士の森田某によると雲は消えて普通らしいんですよ。筋状の雲は黙っていても消えてしまうと。だが、森田某よ。俺が消した雲はばかでかいわたあめのような雲だったぞ!どうだ!
※その後、ムラの前でも消したのですが、あまりに反応が薄かったのでそれからやってません。
※次回更新は11月24日です |
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