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ブラックホールは存在しない
もうずいぶんとテレビをじっくり見ていない。
引っ越した当初は、倒れていたアンテナを立てればテレビは見られるものと思ってはいた。しかしその後アンテナを立てても、画面に映るのは相変わらずの砂嵐。
テレビ見ない主義とかじゃないのだけれど、もういいや当分、テレビ…つまんないから。
そう思っている人は確実に増えているんじゃないか?
テレビ局自身が、いかに自分達が痛々しいことをやっているかに気づかないかぎり、視聴者のテレビ離れはこれからもどんどん進んでいくのではないだろうか?
とはいっても、新聞の番組表は毎日見ている。だって番組のタイトルがおもしろいんだもん。だけど思うことは、いつもこんな感じ。
相変わらずやなー、テレビ!
あーテレビもねぇ、ラジオもねぇ、車はもちろん走ってねぇ。
かなり吉幾三な平沢の夜はふけていく…。
でもF1中継だけは見たいな。今年のチャンピオンはやっぱりハミルトンなのであろうか?
あと日ハム優勝で決まりとして、日本シリーズは見たいな。阪神と当たることになったらかなり盛り上がるんじゃない?
あと、どうでもいいんだけど「どんだけー!」ってどう使うの? かなり謎。
そんな平沢の夜なのだが、そんな環境にいると、
最近では、東京にいたときの生活とは明らかに違う傾向が浮き彫りになってきた。
まず、寝る時間が非常にはやくなっていきます。
交わされる会話の内容が非常に素朴になっていきます。
気がつくと四足で歩いています。
遊びや娯楽が非常に薄味になっていきます。
たとえば実際、加藤君の昨冬のケースでは、あまりにも暇なためなのか、「ハッ!」と気がつくと、<机の木目を眼で追うゲーム>というかなり薄味な遊びをしていた自分に気づき、思わずニンマリしたそうだ。
しかし、何か日常にパンチが欲しいときは、みんなでイベントをでっちあげる。
話はそれるが、ここではほとんどの食材が新鮮でおいしいかつ安全(将来的には酒以外の口に入れるほとんどのものは自分で作りたいな。今は廻りの農家の方にお世話になっている部分が大きいけど)。空気も東京大学の調査で日本の中でも指折りの綺麗な地域(一説によると日本一。ほんと?)だという事がわかったそうだ。水は蛇口をひねれば湧き水がでてくる。佐波くん、湧き水だよ!湧き水!
しかし、そんな幸せな環境に居ても、何か毒っ気のあるものが欲しくなることが不思議とあるのだ。
芸人で例えるなら「のりお」 なんか「のりお」が恋しくなるときない?
つくつくぼーし!つくつくぼーし!つくつくぼーし!
さぁ言ってごらん!すっきりするから。君をふったあの男のことなんて今すぐわすれなよ。
アムちゃんはこの場所にきて、とっくに止めていたタバコを吸いたくなったそうだ。
その感じ、なんかすごくよくわかる。
僕はなんとなく毒っ気を身体が欲しているときには、その欲求にさからわずに某ハンバーガーチェーン店にいく。
これは禁煙するときにニコチンのパッチを貼るのと似たようなことなんだと思う。
話を戻して、ある晩の夕食後、皆なんとなく毎日の生活に「のりお」不足を感じはじめていた。
そこで無理やりイベントがでっちあげられた。
しかしその内容は「旭川に映画を見にいこう!!」というこれまた薄味なものだった。
が、すでにかなりの盛り上がりをみせていた。それは異常なほど…。
「ねぇ、ねぇ、何着ていく?」
「旭川だから精一杯おしゃれをしていかなきゃね!」
「じゃ、一番自分がおしゃれだと思うカッコで行こうよ」
「やだよ、そんな、オシャレってさぁ…」
「じゃ、アムちゃんのカッコは俺が考えてやる!」
「考えて、考えて!」
「じゃー、まず、薪のポシェットの首から下げてー」
「何?その薪のポシェットって?」
「いやー普通にさ、軽めの薪に糸をつけて首から下げるんだけど」
「えー、何も入らないじゃん。でも、まぁ、かわいいからいいかぁ…」
「くつはねぇ、長靴、いやビーサンかな。上着はいつものそれでいいんじゃない?あら、オシャレじゃん! スタイル出てるねー!」
「えーアムちゃん、「お出かけ用」のスニーカーあるからそっちがいい」
「アムちゃん、「お出かけ用」なんてあったっけ?」
「あるよ、まだ全然綺麗なのが」
「えー!アムちゃんがそんな綺麗なスニーカーをはいているの見たことないよ」
「ううん、あるの、あるの、ナイキのが!」
「ナイキ?ナイキってあのナイキ?(爆笑)」
「だってナイキ、一足しか持ってないじゃん!(爆笑)」
「じゃ俺はね、背広かな?グレイの。背筋伸ばした感じで。背広の上をジャケットにして。その下は普通に無地の白いTシャツかなぁ…。」
「ズボンは」?
「ズボンはねー、あんまガンバっちゃってるのが分ると恥ずかしいからなー。んーなんだろなー。ジャージとかだとガンバリすぎだもんなぁ…」
「(笑いながら)えー?普通にジーパンでいいんじゃないのー?」(カトキチのこのセンスが僕的にはこの夜の1等賞)
散々笑って疲れたあとで、僕らはトドメの一撃を浴びる
引き上る際、僕は玄関に、それは明らかに「おでかけ用」ではない小汚いナイキをみつけた。
アムちゃんの言っでた、お出がけよ(ぎゃはは)(ぎゃはは)って(ぎゃはは)(ぎゃはは)
この(ぎゃはは)ズニっ(ぎゃはは)ズニっ(ぎゃはは)ズニッカ(ぎゃはは)のこと?
なっ(ぎゃはは)なんで(ぎゃはは)っ(ぎゃはは)、わらうの?(ぎゃはは)
すっ、すっ(ぎゃはは)、すっさま(ぎゃはは)じいっ(ぎゃはは)(ぎゃはは)
おでかけよっ(ぎゃはは)だなー、コレ!!(ぎゃはは)(ぎゃはは)
殺される…。(ちなみに、その時見た映画は「大日本人」 これにも殺された)
話しはいきなり変わって、ここで恒例の近況報告。
長い間、ああだ、こうだ、頭を悩ませていた玄関の修理がやっと終わった。
別に玄関なんかなくても、良いのだけれど。何もそこまで酔わなくても、いいのだけれど。
冬を考えると、絶対直さなければならなかった。
玄関自体の壁が歪んでいるので、アルミの引き戸ドアが閉まらなかった。また基礎が移動してしまっているので、床が陥没していた。
ここに来てから、ムラと玄関の修理方法を何回話しただろう?とはいってもお互い素人。結局、いつも話しはどうどうめぐり。
つまり、なんで難航していたかといったら、最初からつくるよりも直す方が難しいってことなんだ。
とりあえず、アルミサッシを壊すことから、この修理がはじまった。
壊したのは良いのだけれど、何もここまでやることはなかったじゃない。
途中、ちょっと暗雲がやって来たかに思えたが、最終的には思ったよりもテンポよく完成した。
でも、やっぱりムラは凄いねぇ。玄関のコンクリの打ちなんかは見事でした。僕はね、基本的にアホっていうのもあるし、筋道たてて作業するのが苦手。すでにムラが棟梁で、こっちは小うるさいバイトという感じ。どんな玄関になったかは、下の写真を見てみて。
結局、なんでもそうだけど、とりあえずはじめないとはじまらない。
そしてなんとかなっちゃうもんだ。要はやる気と覚悟なんだな。
僕はドアを開けたり閉じたりしながら、感慨にふけっていた。
「やっと出来たのね!」
横からの突然の声に、持っていたかなづちが脈をうった。
横を見ても誰も居ない。しかし足元に視線を落すとあのリスがまた来ていた。
「毎日、毎日、ちょっとづつ完成していくのをずっと楽しみに見ていたのよ、どうなるんだろ?と思って。 そのノブ、流木か何か?」
「あーこれ?こないだ海にキャンプに行った時に、ムラが拾っておいたんだよね」
「やるもんねーシンイリスァン。素敵じゃない!」
「本当?ありがとう。つうか、まぁこういうの、ほとんどはムラが考えているんだけどね」
「でも、これでまたひとつ問題がかたづいたよ。だけど、やんないとダメなところはたくさんあるんだけどさ。雨漏りもなかなか直らないし、風呂はどうすればよいのか検討もつかないしさ。でもやっと洗濯はできるようになったんだ、それはメチャクチャうれしい」
「まーしょうがないわね、好きでやってるんだから」
「そんだ! ところで、どこからずっと見てたのよ?前もここに来たもんね。家、近く?」
「凄く近いわよ。今から遊びに来る?一緒に完成記念パーティやりましょうよ!」
「いいけどさー、この身体、あなたの家に入れるの?」
「大丈夫よ!いきましょうよ、ついてきて!」
このリスはどこに住んでいるのだろう? 僕はリスの先導で歩き出した。たった何歩か…。
驚いたことにリスが登って行った木は、この家のまん前の木だった。それは僕らが居間から毎日良く見ている木だ。
「ここ?ここに住んでるの? ここからずっと見てたの?」
「そーよ!ダメ?」
「だって、もーこれ、軽い監視じゃん!」
「リスがどこに住もうが勝手でしょ!!」
下から見上げる葉の中には家というよりテラスみたいなものがみえる。近くで幹を見ると登りやすいように細工がしてあった。さほど労力を使うことなく、僕はSOOの住みかに着いた。
一見してこの場所は、リスのためだけに作られたものではないという事がわかった。
僕がすわった部分のところだけ、つまり、ちょうど人間の尻サイズに木の艶具合が違っていたからだ。
僕以外にも誰かここに来ていることは間違いない…。 斉藤さん…?
ここはやはり家というよりテラスに近い、幹の出っぱりをテーブル代わりにして、何かのミニチュアが置いてある。ビール? 確かにビール缶だ。 なんと全長15ミリのサッポロビールだ。
「何アレ?飲めるの?」
「もちろんよ! 今日の日のために、準備しておいたのよ」
僕らはそのビ-ルででささやかな乾杯をした。躊躇したが僕は一気に飲んだ。味はビールのまんまなのだが、アルコール度数はかなりきつい気がする。そして予想どおりぬるかった。
SOOによると、リス用ビールの生産は国から多額の補助金が出るために、どのメーカーもやりたがるらしい。そしてこの世界において、ビールを飲む動物は人間とリスだけだそうだ。
その後、いろいろな話をとめどなく話した。聞いちゃいけないことがありすぎるような気がして、僕は自分の話すことばに慎重になった。しかしSOOが勝手にあれこれ話している。会話の途中から僕はここに来てしまったことを後悔しはじめていた。SOOの話すことがあまりに衝撃的な内容だったためだ。しかしその話しを広めてくれとばかりに、彼女はしゃべることを止めようとはしない。どうして俺に?
まず驚いたのは、リスは僕らの知っているリスではけしてなかったということ。そしてリス社会と政府は、およそ1世紀にわたって組織的なつながりをもっていたということ。何故に一部の人間は、リス社会とコンタクトを持ちたがるのであろうか?
それは、リスの科学力は人間よりはるかに進んでいるからであり、その情報を提供することによって、リスは政府からなんらかの見返りを受けているのだそうだ。
そしてたとえば半導体、超伝導のアイデアは、元もとリスからの提供であった!
「何千年の人間の歴史の中で、ここ60年でこんなに科学が発達したことを、あなたは不自然だと思わない?たった60年よ!」
そしてもっと驚いた事実は、リス達の寿命は驚くほど長く(千年弱)、それが彼らの科学力を発達させた大きな原因らしい。つまり同じ研究を途絶えることなく続けられるからだ。しかしそれだけではなく、発明、発見には絶対に不可欠な「インスピレーション」を、いかに受けるか?というノウハウもかなり研究され、すでにその方法はかなり確立しているとのことだ。簡単に言うと、彼らが「インスピレーション」を受けるために使っていると解明した部分は、しっぽであったそうだ。 つまり彼らはしっぽで発想している!
「でも、俺、死んだリス見たことあるけどな」
「それは死んだフリよ、フリ」
「なんでフリをする必要あるのよ?」
「だって、いつまでも生きていたら気味悪がられるじゃない!」
「それより、ちょっといいこと教えてあげようか?あなた宇宙とかに興味ある?」
「普通よりは、あるんじゃないかな?」
「想像力をフルにして聞いてね。 あのね、宇宙はね、双子の構造になっているの。つまり、この宇宙には双子のもうひとつの宇宙があるわけね。この2つは全く同じ半径と質量よ。しかしそれぞれが全く同じというわけではないの。個別性があるわけね。このペアの宇宙は同時に創造されたんだけど、一番違う点は、もう一方には時間がないの。それがあなたたちが俗にいう「あの世」よ。 大丈夫?こんな話」
「いや、よくわからなかったけど大好物だよ、そういう話」
「あとね…」
「なに、なに?」
「ブラックホールなんて、本当はないのよ」
今週読んだ105円本
「人生はまじめが勝つ」志茂田景樹著
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